私が子どもと出かけたときの話です。その当時、アパート住まいであったため、犬を飼っていませんでした。そのため、公園で犬を見かけた時、私の子どもが触りたい、写真を撮りたいといい始めたのです。
それを聞いて、私は触ってもいいかどうかを飼い主さんに確かめました。犬はかなりの大型犬。子どもが怖がるかなと思ったけれど、ぜんぜん怖がらずむしろ大喜び。触りまくって写真を撮りまくって帰宅したのです。

その写真を私は実家の父に見せました。すると認知症の父は、昔飼っていた犬を思い出したのです。当時はクリーム色のゴールデンレトリーバーを飼っていたのです。この日子どもがたわむれた犬は、ゴールデンレトリーバーではありませんでした。しかし、父は当時を懐かしむように目を細めたのです。

当時、ゴールデンレトリーバーが赤ちゃんの時は、子どもの私でも散歩が簡単にできました。しかし、あっという間に大きくなってしまい、40キロを超えてしまいました。そこでまだ小学生だった私は、一人では散歩が出来ず父に任せてしまうようになったのです。

飼い始めたときには、私が散歩するという約束だったのにお父さんに任せるのは正直嫌でした。なんとなく約束を破るようで。しかし、父は嫌な顔一つせず、私の言うとおりに散歩をしてくれました。
時には一緒に散歩をして、父に進学の悩みや部活の悩みをすることも。

犬がいると、何となく場が和らいでなんでも話せるような気になるんですよね。そのため、その時だけは、父となんで話をしていたような気がします。

父のそれを思い出し、私と子どもが触れあった写真を見ながら、昔話に花が咲きました。

犬がいる生活。それがとても懐かしく思った瞬間です。ゴールデンレトリーバーがいる時には、家族みんなの中心に犬がいて、楽しい生活でした。それを急に父が思い出してくれたことで私もうれしく思いましたね。犬がまさに父の記憶を思い出させてくれたと思った瞬間でした。